孤独な私が愛を見つけたら
こんな時まで真面目だな、この人。

「うん。」

「俺の何が足りなかったのかな。佐奈さんを思う気持ちは誰にも負けてないと思っていたんですけどね。」

そんな風に話す東司さんの声の後ろに、何やらガヤガヤした雰囲気を感じる。

「ねえ、まだ外に居るの?」

私は思わず聞いた。

「ええ、まだ佐奈さんと食事した店の前です。香織さんに報告はしなくちゃと思って…。」

一瞬、東司さんの声が途切れたような気がした。

「そんなに急がなくてもいいのに。」

私はぼそりとつぶやく。

「すいません。誰かに聞いてもらわないと…、自分が保てなくって…。」

こんな弱々しい東司さんの声を聞くのは初めてかもしれない。

「…ちゃんと自分の気持ちを佐奈ちゃんに伝えたんでしょう?それは凄い事だと思うわ。」

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