孤独な私が愛を見つけたら
私自身もどう受け止めて良いか分からない状態だし…。

すると坂下さんは私の手にそっと自分の手を重ねた。

いつものようにすぐに放すつもりがないようで、今までと雰囲気が違う。

「俺はてっきり新しい経験に慣れない佐奈が、知恵熱を出したんじゃないかと思っていた。」

坂下さんはふっと口の端に笑みを浮かべた。

「えっ?」

「三井に今の佐奈には休息が必要だから、絶対にお見舞いに行くなと言われていたんだが…。」

少しバツの悪そうな坂下さんの表情。

「どうしても自分を止められなかった。昨夜だって…。」

私は目を丸くして、そんな様子の坂下さんを見つめるばかりだ。

「佐奈の様子を伺っていた。あまりに三井と吉田さんが前のめりだったから、少し心配になって…。」

自然と私の肩から力が抜けた。

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