孤独な私が愛を見つけたら
そうか…、私は私なりに緊張していたんだ。

ううん、状況に圧倒されていたという方が近いのだろうか。

「でも、佐奈の口から楽しかったという言葉が聞けて、ホッとした。」

坂下さんってこんな表情をする人だっけ。

まるで妹を心配しているお兄さんの優しい笑顔…。

「佐奈。」

私の名を呼ぶ声も温かく優しい。

「俺達は俺達それぞれのやり方でお前に近づいて行こうと思う。だから…。」

私の手を握っている坂下さんの手に力が入った。

「佐奈は無理しないで、その時その時に感じた事をちゃんと俺達に伝えて欲しい。」

そして坂下さんはスッと立ち上がった。

「分かったか?」

今度は坂下さんを見上げて私はうなずく。

「え…っと…。」

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