孤独な私が愛を見つけたら
それとも…。

私は自然に手のひらの向きを変えていた。

そしてそっと自分から坂下さんの手を握る。

その瞬間、坂下さんの手がビクンと反応した。

手のひら同士、触れた部分が熱い。

坂下さんの手にも力が入ったように感じた。

私達はどれくらいそんな風に過ごしたんだろう。

お互いにハッと我に返ったように、視線がぶつかった。

そしてゆっくりと上になっていた坂下さんの手が離れていった。

あっ…、まだ…。

ふっとそう思った私に、自分自身がたじろぐ。

「佐奈、ゆっくりで良いから。」

坂下さんが立ちあがって、キッチンへ向かった。

私は自分の手を見つめながら、大きな深呼吸をした。

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