私の主治医はお兄ちゃん
縫合の準備を済ませた優兄は意外とすぐに戻ってきた。
優「じゃあ先消毒な。ちょっと染みるぞ〜」
駿「いっ……。優兄…全然ちょっとじゃねー…」
優「我慢しろ。騒ぐと美音が起きるぞ?」
駿「……っ」
そう言われたら何も言えない俺。
にしても痛すぎる。
優「じゃあ次は麻酔の注射な〜。分かってると思うけど消毒より痛いけど…うごくなよ。」
駿「え…ちょっと待っ……。」
返事を待つこともなく麻酔を打つ優兄。
鬼だ。
痛すぎて声を出す気にも慣れない俺。
自然と涙が……
優「はい。じゃあ麻酔効いてくるまで少し話そうか。」
駿「別に話すことなんてねぇよ。」
優「俺はある。なぁ…なんであんなに無茶をした?」
駿「出かけてくるって言ったじゃん…」
優「そーゆー問題じゃねぇだろ!こんな怪我までして…俺らがどんだけ心配したと思ってるんだよ!!」
そう怒鳴りつけてきた優兄。
こんなに怒っている優兄を見たのは初めてかもしれない。
…でも。
駿「じゃあ……あのまま美音を放っておけば良かったのかよ…俺が行かなかったら、間違いなく美音はこの程度の怪我なんかじゃ済まなかった!!」
優「だからって!!」
美「やめてよ!!」
そう言ってきたのは美音だった。
その顔は泣きたいのを我慢しているかのような…
目に涙をいっぱい溜めた顔だ。
優「美音…」
駿「お前…起きて…」
美「もう…やめようよ。こんなの。」
優「ごめんな。起こして。もう一度横になろうか。駿も悪かった。もう麻酔効いてきたよな。ちょっと待っててな。」
そう言ってまだ納得していなさそうな顔で優兄は美音をベッドに戻して再び俺のところにきた。