はやしくんに、紫陽花の花束を。
「置いてくなよお前ら!」
店に到着すると、泣きそうな顔で私達に訴えてくる慶次郎。お前の周り人多いからと林くんが言うと、仕方なさそうな顔をする。
「でも俺も疲れんだよ…外面良くするの」
「慶次郎は昔から外面良いじゃん、私以外には」
「俺だって人選んでんだよ」
なんだそれ腹立つわ~。
その一言をシカトして、柳瀬の方へと歩いて行くと、遠くから山川待てよ!という声が聞こえるのと同時に、私が向かっている方向から山川くーん!と呼ぶ女子の声がする。
私、慶次郎って女好きなのかと思ってたけど違うんだね…いつも周りに女子が居た気がしてた。
「で?林くんとは沢山話せたの?」
「うん。彼氏役やってもらうことになった」
「はー、また贅沢な話だこと!」
確かにめちゃくちゃ贅沢だよな。高校の時から今まで好きだった人に偶然出くわして、何故かしら彼氏役やってもらって。
まぁ、あっちは自分のためなんだけれど。
私だって自分のためだ。はやしくんが他の人に取られたら困るってだけの理由だし…
「あの、山川さんですよね」
「ん?はいそうですけど」
突然私に話しかけてきた男の人は、そう聞くと目を輝かせて私の手を握ってきた。
嘘でしょ?私モテるタイプじゃないんだけど。この人よく見たら女子達が、慶次郎とはやしくんとあと1人カッコいい!って騒いでた人じゃん。
「いや、山川さん俺のタイプどストライクなんです!良かったら連絡先交換してもらえませんか?」
「あ、あの…えぇ…?」
男慣れしていない私は、押されると弱い。交換して欲しいって言われたらしなくてはならない気がしてならない。
誰か助けて…そう思っていると、私の後ろから肩に手をポンと乗せてくる男の人が1人。
「ななせ、口説かれてるの?」
「はやしくん…」