はやしくんに、紫陽花の花束を。
こんなの助けてくれるような人じゃなかったじゃん…やっぱり大人になると多少は変わるところがあるのかもな、なんて思いながらも男子が苦手な私は、はやしくんの優しさにしがみつく。
私の名前を呼ぶはやしくんのスーツの裾を、キュッと掴む。
スーツだなんて大人だな。なんて言ってる私も綺麗なドレスを着てるんだけど。馬子にも衣装って感じでドレスに着られている気がする。
「俺、離れないでって言ったのに」
悲しそうな顔をするはやしくんを見て咄嗟にごめんなさいと呟いたが、勿論そんなこと言われていないので内心は心臓バックバクで動揺してる。
私を近くに引き寄せると、耳元で
「彼女役ちゃんとやってね」
と言われ、その後私に話しかけてきてくれた男性に向かってこう言う。
「すいません、俺のなので」
「そっかー、こんなにイケメンの彼氏いるなら仕方ないね」
はやしくんの顔を見るなり、仕方ないと言って残念そうに去って行く男性。
ふぅ、と息を吐くわたしの彼氏役。ってかそんな彼氏っぽいことが出来るということに驚きを隠せなくてつい口を開いた。
「ねぇ、あの時彼女居たことないって言ってたけど、あれから出来たの?」
「全然。俺の恋愛知識、ななせから借りた少女漫画が全てだから」
「えっ、泣かシン?」
「そう、泣かないでシンデレラ。今みたいなシーンあったでしょ」
わたしが高校の時にどハマりしていた少女漫画をかしていたことがある。と言うか強制的に貸したことがある。