はやしくんに、紫陽花の花束を。


「てか、七瀬がブーケトス取るとは思わなかったわ~!」


2人で会話をしていると、新婦の飛鳥が後ろから私に抱きついてくる。


突然のことでウワァ!と声を上げると、ごめん脅かしちゃった?といつもの笑顔で笑う飛鳥。この子の笑った顔好きなんだよなぁ、私。


「まさか取るなんて思わなかったよ。結婚から疎遠してる私が」


「これを機にだね。素敵な彼氏もいるみたいだし」


そうはやしくんに向かって言った後に、私だけに見えるようウィンクをする飛鳥。さっき久々に会ったって話はしたし、周りの噂でも聞いたのだろうか…


その声に林くんはにこりと微笑み、私の頭をポンとしてから少し他の人と話ししてくると言って私の近くから離れた。


「紫陽花のブーケなんて、あまり見たことない。6月だから?」


「まぁね。七瀬、紫陽花の花言葉知ってる?」


知らんわ、と笑いながら答えると、興味ありそうなのにねと笑われる。私って花好きそうに見えるのだろうか。


少し眉を下げて話し始める飛鳥。



「あじさいの花言葉は、「移り気」「浮気」「無常」よ」


「うわ、結婚式に不向きすぎる…」


そんなブーケ受け取ってしまったのか、と少しヘコんでいると、まぁ最後まで聞きなさいよと私の背中をバシバシ叩きながら言ってきた。痛い。


「でも色で花言葉違うのよ。ピンクは「元気な女性」
ブルーは「忍耐強い愛」白は「寛容」とかね」


だから、私はその3色しかブーケに入れてないわよと言って手をヒラヒラと振り私の近くを去っていった。相変わらず嵐のような子だなぁ…


花言葉なんて考えたことなかった。手に持っていたブーケをまじまじと見つめていると、隣から聞き覚えのある声で話しかけてくる奴が1人。


「お前花なんて見る柄じゃないだろ」


「あ、ねぇ。慶次郎は紫陽花の花言葉知ってる?」


「移り気」


一つだけだけど知っていた…慶次郎に負けたのかなんて思っていると私の持っていた紫陽花の花束の青い花びらに触れる。
< 13 / 44 >

この作品をシェア

pagetop