はやしくんに、紫陽花の花束を。


「無情とか、忍耐強い愛とか、お前にぴったりの花だな」


やたら詳しいな慶次郎。そんなに花好きだっけ?と言うか忍耐強い愛に関しては分かるとしても、前者が全然分からない。


「何、無情って」


むすっとしながら聞いてみると、いつものようには笑わず、真面目な顔をして私の額にデコピンする。しかも結構強めのやつ。


「俺に対する感情。もし俺がお前と結婚するなら紫陽花ばっかりで卓作ってやんのにな」


それぐらい、お前にはお似合いの花だよと言って私の元を去っていく。どいつもこいつも何なんだ…


私は後に、慶次郎のことをカッコいいと騒いでいた女子達から聞くことになるのだが、 彼の仕事はどうやらブライダルフラワーコーディネーターらしい。


今回の結婚式で花を用意したのも全て慶次郎。センス良いなあ、なんて思ってたのに。


「アンタさぁ、本当に男子に絡みに行かないのね、引くほどに」


「柳瀬がおかしいんだよ、彼氏いるのに」


「人脈を広げるのを目標に女子とも男子とも会話してんのよ私は」


男子の方が割合高めじゃん、と遠くから見ていたので言ってみるとあ、バレた?と言う柳瀬。仲良くなかったら私この子に関わらないようにしよーっと、って思うタイプ。


と、言うかそもそもはやしくんと慶次郎と同じぐらい真逆なんだよねこの子とは。


化粧品会社の営業マンとか、人気のカフェ店員とか、車の整備士とか、人気アイドルグループの研究生とか。いっぱい居たよと楽しそうに話をする柳瀬。



「そういや、ななせのケーキ屋が入ってるデパートに店舗があるって言ってたスーツ屋さんの人もいたよ」


「ん、誰?」


「え、うそ、聞いてないの?」


まさか。いやいやまさか。




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