はやしくんに、紫陽花の花束を。


「はやしくん販売してんの!?」


男子の中に居たはやしくんに、遠くから呼びかける私。みんなみたいに嫌な顔で追い払われると思ったけれど、周りに居た男子にちょっと行ってくると声をかけて私の元へと歩いてくる。


「してない。裏方担当」


時々することもあるけど、と嫌そうな顔で言ってくる。てか誰に聞いたのと問い詰められたので、柳瀬の名前を言うとなるほどと呟いた。


あの子はななせとは真逆のタイプだねと言って二次会の立食パーティで手に取っていたサラダを食べるはやしくん。嫌だ、超ヘルシーじゃないの。


ガツガツお肉ばっかり食べてる私も少しは見習おうと思う…。


「二次会の最後に答え聞こうと思ったのに、残念」


「絶対答えられなかったと思う」


「あ、そうだ。ななせが働いてるデパートに来週用事あるんだけど」


どこのケーキ屋?とニヤニヤしながら聞いてくる。こいつ見に来る気だな…私も少し意地悪してやらないと。


「さぁどこでしょう?当ててみてください」


「ん、わかった」


意地悪したはずが、まさかの了承。わかったと言った後、サラダ取ってくると言ってまた席を離れた。当てる気ないじゃん、なんなの本当に。


美味しすぎる食べ物の飲み物に囲まれてニコニコ食していると、二次会も終盤に近づいていると新郎新婦に告げられ、三次会への出欠が取られる。


時計を見るともう10時。ここから家に帰るには30分はかかるし…明日仕事だし、私は帰ろう。


「山川帰んの?」


「うん、慶次郎は朝まで呑むんでしょ」


「馬鹿か、明日仕事だしもうそんなことできる歳じゃねぇっつーの」


そうか。慶次郎も帰るなら護衛として一緒に帰ってもらおうかな。なんて上から目線のことを考えていると慶次郎から口を開いてきた。


「お前まだ地元住んでるの?」


…そうだ、この人が同じ方向に帰る可能性を考えていなかった。そもそも私が地元に住んでいない。


「ううん、中央区に住んでる」


「まじ?じゃあ同じだな。途中まで一緒に帰ってやるよ」


逆に上から目線で言われた私は、一気に冷めた。



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