はやしくんに、紫陽花の花束を。


「襲われそうだし良いです…」


「おい!この俺から言ってやってんのに!」


「そういう所が残念なんだよね」


じゃあまたね。と言って三次会に行く人と帰る人が離れて行く。私はさっさと帰ろうと慶次郎のおい待て!という声を無視して信号を渡る。


本当に、外見良くしてる時の慶次郎しか好きじゃない。昔からあんな感じだし…なんで上から言えば私がうんと言うと思ってるのだろうか?


携帯で次の電車を調べると、残念なことに今出たばかりらしく20分も間があったので、適当にカフェでコーヒー買ってから駅に向かおう。


そう思いカフェに入ろうとすると


「ハァ…ちょ、ななせ。連絡先、きいてない」


後ろから追いかけてきた様子のはやしくんが、私の腕を掴んだ。凄い急いだんだろうな、髪の毛も乱れてる。面倒くさがりの彼がここまでしてくれたとは。


「あー!ごめん!教える!」


「うん。映画見るから」


私が学生の頃は存在としてなかったLINEの連絡先を交換する。あぁ、学生の頃にこれがあったらどんだけ楽だったか…


でも、メールが来るときに好きな人だけ着信音変えたりメールのフォルダを作ってみたり、色々あの頃も楽しかったよなぁ。


メールアドレスを見て携帯の機種同じなだけで少し嬉しかったり。青春思い出すわ。


「あと火曜日、俺ななせに話しかけるから、絶対」


そう言ってからじゃあね、と言って歩き出そうとするはやしくん。火曜ってあれか、私の勤務先のデパートに用事がある日か。


歩き出そうとしたはやしくんの腕を、なんとなく掴んでしまった私。驚く彼、そして私も予想外のことをしたので自分に驚く。


「なに、どうしたの」


眉を下げて笑いながら掴まれていない手で私の頭をポンとする。この癖は昔から変わってないな…相変わらず安心する、好き。





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