はやしくんに、紫陽花の花束を。
気を付けてね、と慶次郎のママに見送られて歩き出す。
小学校はギリギリ通学区域が違ったから中学から一緒になったわけだけど、少し違うだけで、一気に道がわからなくなる。
「あ、慶次郎」
「おー林!」
小学校の校門に入る寸前、すらっとしてモデル体型の男の子が慶次郎を目の前にして止まる。その人に林と声をかけた慶次郎を見て、私の動きも止まる。
ほー、この人が。と小声で呟いてはやしくんと私を行ったり来たり舐め回すように見てくる高森。
「はじめまして、はやしくん」
「…どーも」
彼との初対面はこれだった。
ぎこちない感じで挨拶をして、はやしくんは他の友人達の元に向かったのだけれど、その後すぐ私たちもその友人グループに合流することになって…
あれよ、あれ。
はやしくんって団体行動苦手且つ恥ずかしがり屋みたいで。私と高森に目を合わせてくれなかった。
「ねー七瀬ちゃん、高森ちゃん!一緒にお祭り回ろうよー。抜け出してさ、ね?」
時は過ぎ、はやしくんとかなり距離はあるが一緒に回ってはいた。そんな中でこんなことを言い出したグループのうち2名。
煙草を吸い、笑いながらそう言うが…。
そもそも、何で煙草吸ってんだ?煙草吸ってはいけない年齢でしょうが。何普通に吸ってんのこの人たち。てか、はやしくんもこんなメンバーの中の一員だなんて。
さっき校門であった時に手に持っていたコンビニ袋の中に小さい箱入ってたしなぁ…
所詮、そう言う人か。
そして、そのセリフに続いてある1人の男の子がこう言い放った。
「林ー。七瀬ちゃん嫌がってる」
「…ん、ななせ。俺と買いに行こ」