はやしくんに、紫陽花の花束を。
こくん、と頷いて高森をチラッと見ると、高森は慶次郎の腕をつかみ、親指を立てた。私は大丈夫だから行って来い。そういうことだと思う。
慶次郎は何が起きてるか分かってなくてめちゃくちゃビビってたけど。
「私、タコ苦手なんだよね」
「え。タコ焼き食べたいって言ってたのに」
「いつもタコ抜いて他の人に食べてもらってる」
2人きりになり、歩き出すとメールで話した内容のお話をする。なんだこれ夢みたいだ。
変なの、じゃあお好み焼きで良いじゃんとクスクス笑うはやしくん。たこ焼きとお好み焼きは別でしょうが!と言うと、また笑う。
そしてはやしくんは、私が気になっていた小さな箱をポケットから取り出した。あ、これはまさか…
「あ、ななせもいる?」
「いらな……え?」
「そう?いらないなら良いけど」
はやしくんが取り出したのはなんと、ココアシガレットだった。アイツらカッコつけたいのか法律違反してんだよね、と言ってココアシガレットをぽりぽり食べるはやしくん。
ウサギがニンジン食べてるのを見ている感覚。この子、笑う時の顔がものすごくかわいい。
「煙草かと思ったー!ココアシガレットならいる!好き!」
そう言って手を出す私の手を、ポンと触れ、触れたまま動かずこう聞いた。
「俺のこと喫煙者だと思ったの?」
「…ごめんなさい」
「…ばかななせ。」
そう言って私の手にココアシガレットを置き、また歩き出す。なんだ今の。めっちゃかわいい顔してばかとか言ってくるし。馬鹿じゃなくて、ばか。だから。
ひらがな表記が似合うぐらいふんわりした言い方…可愛い、可愛すぎる。