はやしくんに、紫陽花の花束を。

「列、進んでるよ?」


そう言ってはやしくんの服の裾をぎゅっと掴む。


少し驚いた顔をしていたけれど、ホッとした顔で私の頭をぽんぽんした。


「そうだね、行こう…じゃ、そういうことで」


そう言って前に進むはやしくん。マジかー彼女作ったんだーと言う女の子。その女の子の隣にいたもう1人の子は悲しそうに私たちを見つめていた。


「ごめん、へんなとこ見せて」


「大丈夫。それより良かったの?」


多分、彼女ですと言ってしまうのは不正解だったと思う。なので何も言わずに部外者の私がはやしくんの気を引いてその場を退散させた。


私の問いにはやしくんは、眉を下げて微笑みながらこう言う。


「うん。どれだけ好意持たれても、好きじゃなかったし仕方ない。変に期待させる方が、残酷」


なんて言えば良かったか分からなくて黙り込んでしまった所を、私が声かけてくれて助かったと言っていた。


まぁ、まだはやしくんのこと好きそうだったしな。


「ってか、私の行動であの女の子たちに勘違いされてるけど大丈夫かな?」


「うん、まぁ。ななせなら良いよ」


なんてね、と言って私たちの番になったのでお金を払いたこ焼きを受け取るはやしくん。


待って待ってなんだ今のは。流石に期待してしまうよ?はやしくんが恋愛に興味ないって今聞いちゃったけど。


やっとの思いでたこ焼きを手にした私たちは、木陰に座って食べることにした。



「うわ、あのおじさん…箸1膳しか入れてくれてない」


「いいよ、一緒に使おう?」


私が提案すると、はやしくんの動きがピタリと止まる。


あれ…はやしくん、潔癖症なのかな。そんな情報慶次郎から貰ってないんだけど。それなら一緒に使おうなんて言ったら引くよなぁ…
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