はやしくんに、紫陽花の花束を。
「…ななせが、良いなら」
そう言った彼の頬はうすいピンク色だった気がした。こんなの、お祭りの電飾のせいだと思うけど。
ななせはタコだめだもんね、と言ってたこ焼きを1つ半分に割った。そしてタコを箸で取り出し、ぱくっと食べるはやしくん。
「…ん」
そう言ってタコのなくなった謂わゆる、焼きの部分を半分に切って私の口元へと運ぶ。ん?まじで?
「こ、これはなんでしょう」
このカップルみたいな光景は一体…
緊張しすぎて問いただすと、はやしくんは「んー」と少し考えてからニコニコしてこう話し出す。
「ファーストバイト?」
姉の結婚式で最近見たから興味があった、と言って私の口元にグイグイたこ焼きを持ってくる。
ファーストバイトとは違うぞ?これは俗に言う「あーん」 だそ!?と思いながらも近づけられすぎて抵抗できずに口を開ける私。
「俺がタコ抜いたんだし、美味しいでしょ」
慶次郎が言いそうなセリフ言ってみたと、ずっとニコニコ笑顔のはやしくんは、そのあともう半分のたこ焼きを自分の口へと放り込んだ。
間接キス気にしないタイプすぎてビビる。
「はやしくん、あの」
「ん?」
そう言いながら私の口元にたこ焼きの半分を運ぶ。もう作業じゃんこんなの。
自分で食べるよ、と言うと楽しいからもう少しやらせてと言った。楽しんじゃってるよこの子。
さっきはやしくんに話しかけていた女の子2人組が私たちを遠くから見ている。林ってあんなタイプだった…?と言っているように見えた。口の動きが。
「おいお前ら!」
そんな幸せな時間も束の間、慶次郎がはやしくんの頭をスパーンと叩くと、はやしくんは後ろを見てゲンナリした顔をする。
「何してんだよ!山川もなんで普通に食ってんだよ!」
「慶次郎うるさい。耳元で叫ばないで」
騒ぐ慶次郎と、耳を塞いで嫌がるはやしくん。