はやしくんに、紫陽花の花束を。

「まぁ奏多は嘘はつかないな」


「確かに1回もつかれたことないな」


念を押すようにそういう友達たち。何言ってんだという目で見ているはやしくん。


お祭りもそろそろ終わりの時間になり、最後には花火が上がるわけで。この地域めっちゃお金持ってるなあ、なんて思いながらその花火を見ていた。



「山川、数学の宿題やった?」


「あ、やってない。月曜私たち当たるんだっけ」


「うわーそうだった。俺もやるけどお前もちゃんとやっておけよ、んで、月曜見せ合って答え合わせ」


間違えたら、めちゃくちゃ優星に怒られるから。と青ざめながら言う。確かにいつもフレンドリーで優しい担任は、宿題にかなり厳しい。


青ざめながら花火を見る私と、右隣に座る慶次郎。私の左隣に座っているはやしくんは首を傾げて少し眉を下げながらこう言う。


「良いね、同じ学校。」


「林も南高受ければよかったのに」


「俺は、勉強苦手だから」


そう言って私の方を見る。


「ななせと同じ学校なら、頑張れたのに」


そう私にだけ聞こえる声で言った後、体育座りしていたはやしくんは、顔を伏せた。


花火が終わって帰る時、慶次郎に聞いた。


どうやらはやしくんは、来月高校を辞めるらしい。理由は聞かなかったけど。慶次郎も聞かれたくないなって顔をしてたから。


まぁ、もう少し仲良くなってから聞けば良い、そう思っていた。



思っていた、のに。




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