はやしくんに、紫陽花の花束を。
「…これ」
「お前ずっと欲しがってたじゃん。やる」
そう言って私が開いた袋の中にあったのは、私がずっと雑誌を見て欲しい欲しいと高森に言っていたブレスレット。
薄いピンクの色をしてキラキラしている、バイトをしていなかった私には手が届かなかったもの。
「何で慶次郎が…」
「あんなに近くで騒いでたら分かるだろ。一応高森ちゃんに確認はしてみたけど、山川の欲しいもの知ってる?って」
そもそも、どう言う流れで私にプレゼントしようと思ったのだろうか…なんかあったっけ、最近。
不思議そうな顔をしていると、げんなりした顔で慶次郎が私に言ってくる。
「お前さぁ、明日なんの日か分かってる?」
「明日は…」
はやしくんに会うことしか考えてなかったけど、今思い出した。私明日、誕生日じゃん。
あっ。と言う顔をしていると、げんなりした顔だった慶次郎は眉を下げて笑いはじめた。
「お前、昔から考え事してると自分のことすっかり忘れるよな」
「そんなこと…」
「で、最近は何の考え事?」
昔なら、スッと悩みを言えたと思う。でも、今は何かが違う気がする。はやしくんのことで頭がいっぱいだと言うことは何故か言ってはいけない気がした。
進路のこと、と言って俯く。そのあとすぐにバッと上を向き、慶次郎を見て気になったことを聞いた。
「てか!慶次郎バイトなんかしてたっけ!?このブレスレット高いじゃん」
「あぁ。バイトって言うか、週末だけ親の仕事の手伝いしてんだよ」
楽しいよ、と言って笑う。この人はきっと親の仕事を継ぐ未来がある。昔そんな話をした気がする。
冗談で進路のことーとか言ったけど、マジで悩まなきゃいけないんじゃないんだろうかこれ…。