はやしくんに、紫陽花の花束を。
そうだ。紳士で思い出した。
「はやしくんは、慶次郎の欲しいものとか知ってる?」
「え、どうしたの突然」
「誕生日プレゼントあげようと思って」
そう言えば、はやしくんの誕生日っていつなんだろう。知らないなぁ…
少し考えてくれていたのか、彼は1分後ぐらいに口を開いた。
「アイツ昔から手作りのお菓子とか好きだよ」
「あー確かに。家庭科の授業で女子から貰ってるのとか喜んでたかも」
「うわー」
モテる男は違うね、と言い笑う。
貴方もきっとすごいモテるタイプだと思うよ、とは言えず…はははと笑っておいた。
慶次郎の誕生日は私と近く来週。あまり時間もないので困っていたけれど、そう言われてみれば男子からも家庭科で作ったお菓子とかもらってるな、アイツ。
「そう、ななせこれ」
そう言って私に朝から持っていた袋を渡してくるはやしくん。
「ん?なに?これ」
「お誕生日、おめでとう」
ニコッと笑って私が受け取った袋から手を離す。嘘でしょ、私言ってないしこの状況がもう誕生日プレゼントみたいなものだったのに。
動揺していると、隣を歩くはやしくんが頭をポンとする。
「ちなみに、初給料で買ったんだけど」
「えっ、記念じゃん!嬉しい…ありがとう」
大袈裟だな、と言ってまた笑う。
彼がどんなバイトをしているのかとか、何も知らないな私は。
もう少し知りたいと言っても良いものか… この際だし、誕生日だし、何か教えてくれるかも知れない。
小学生の時に流行っていたプロフィール帳には、どんなことが書いていたっけ、なんて思い出しながら質問をしてみることにした。
「はやしくんってなんのバイトしてるの?」
「建築系かな。再来月には正社員。俺が学校辞めるのは慶次郎から聞いてるよね?」
まさかの自分から話をしてくれる展開。