はやしくんに、紫陽花の花束を。
「うん、聞いた」
「それなら話が早いね。きっとアイツ、気遣って何も言ってないだろうし」
その通り、とは言わずにこくんと頷くと、はやしくんは静かに話出した。
移動して売り場に到着し、私たちの周りにはコップが沢山並ぶ。これなんか綺麗じゃない?なんて会話を挟みながら、本題に入る。
「中学はね、楽しかった。慶次郎は違う学校だったけど、前に祭りで会った奴らと仲良くしてもらって、充実してたって言うか」
あんな奴らだけど、本当に良い奴なんだよ。と笑うはやしくん。
はやしくんを見てたら分かるし、少し話しした時に、はやしくんのことを大切にしているんだなと思ったからそこには何の疑いもなかった。
「高校に入るとさ、俺ねこんな性格だから特別仲良いって奴も出来ないし、母親は入院するし。俺の家母子家庭なんだ。」
水を注ぐと七色に光るカップを手に取り、これなんて綺麗じゃない?と笑いながら話をする彼は、少し私に気を遣っている様子。
はやしくんも慶次郎も、変な所で気を遣う人たちだなあなんて思って少し頬が緩んだ。 似てるじゃん。
「姉も居るけど、あの人は頼りにならないし」
少し眉間にしわを寄せる。お姉さんはそんなに自由人なのか… 。
「まぁ、そんな感じだし。今のご時世、経歴が全てだけど、俺を正社員にしてくれるって言ってくれてるからそこでお世話になろうかなってね。」
学校も馴染めないし、と笑うはやしくん。
各家で色々事情があるんだなぁとしみじみ。私は超がつくほど平和な家に産まれたんだなぁ。
「そっか。なんか愚痴とかは聞くからいつでも連絡してきてね」
「…ありがと。頑張る」
聞いてくれてありがとうと言われたので、こちらこそ話してくれてありがとうと返す。
学校が嫌で辞めるわけではないという話と、まぁ馴染めなかったから半分は嫌になったんだけどという話を聞いて2人で少しだけ笑い、彼の話は終わりを告げた。
そして私のコップの話に戻っていく。