はやしくんに、紫陽花の花束を。


そういえば、柳瀬は大学からの友達だから慶次郎のことは知らなかったなぁ。はやしくんは知らないで当然だけど。同じ高校じゃなかったし。


「コイツ、全然恋愛しようとしなくて。二次会も行こうか迷ってるって言ってたから焦ってたけど…2人が来るなら大丈夫そうですね」


慶次郎とはやしくんに向かってそう言った後、コースの料理を食べ始めた柳瀬。


すげ、始めてフォアグラ食べたわ。と興奮しながら私の肩をバシバシ叩く。強い。痛い。


「にしても林、変わんないね」


「…何が言いたいの」


「えー?内緒」


気持ち悪い、とはやしくんは慶次郎を軽蔑した目で見てから私たちに聞こえないように耳打ちをして話をしているようだった。


何を話しているのか…気になっていたけれど、突然はやしくんが声を張って慶次郎にこう吐き捨て、自分の席に去って行く。


「あまり気に触ることするなら、また絶交するからね」


…慶次郎は一体何をしたのだろうか。


うわこえーと言いながらもニコニコしていて、周りにいる私の友達もその笑顔を見てコソコソとカッコイイだの何だの話をしていた。


「じゃあ山川、また後で」


何故か鼻歌を歌いながら私の席から去って行く慶次郎。去って行った瞬間、周りに居た女子が私に話しかけてくるわけで。


「今の七瀬の彼氏!?どっち!?」


どっちでもねぇ…けど、はやしくんは誰かに取られてたまるか。


「黒髪の方。茶髪はご自由に口説いてください。」


「あー!黒髪もタイプだったのに!」


「黒髪はダメだからねー」


とりあえず、嘘ついたことは後ではやしくんに謝っておくか。 きっとどうでも良いって顔するだろうけど。

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