はやしくんに、紫陽花の花束を。


「ななせ」


そう私の名前を呼ぶはやしくん。名前呼ばれてドキドキバクバクするなんて、学生かよ私。冷静になれ!


「はやしくんだー!夢じゃないんだね!」


「何言ってんの。行くよ」


夢のくだりはクスッと笑ってスルーするはやしくん。そんなはやしくんも輝いてるよ、素晴らしい。


慶次郎は面白くなさそうに私達を見ている。私の友人に囲まれながら。 それにしてもあんなにモテるのに今彼女居ないんだろうか?


まぁ、後で女子に質問攻めに合うだろうし、そこで嫌でも聞くことになるでしょう。


「はやしくん、今なんの仕事してるの?」


「…何してると思う?」


「うーん、ホスト」


私がそう答えると、右の頬を思いっきり引っ張ってきたはやしくん。やばいやばい、マジで痛いやつだこれ。


「ごめんなひゃい!ごめんなひゃい!」


「で、何してると思う?」


「うーん…スーパーの正社員で裏方専門…?」


私がそう答えると、左の頬を思いっきり引っ張ってきたはやしくん。やばいやばい、両頬無くなる。と言うか後者はわりと本気だったんだけどな。


俺のイメージどうなってんの?と言いながら私の頬から手を離したはやしくん。どうもこうも、人と関わるのが嫌いで、出来るだけ避けるような人間でしょうが!


「でもまぁ、良い線行ってるよ」


「で、答えは!?」


「二次会の帰りまでに当ててみて」


そう言って前を見て歩き出す。襟足が少しぴょこんと跳ねるぐらい長い髪を見て、高校の時と変わってないなぁ…なんて思っちゃうなぁ。


そう言えば、と言ってまた横を歩いている私を見て話しかけてきた。


「ななせは?どんな仕事してるの?」


「え、なんだと思う~?」


「うわ、俺の真似か」


こう言うの苦手なことも知ってる。けど、私のことを気にしてくれているのが嬉しすぎて、同じ返しをしてみた。
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