ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
「ここをどう思う?」

 前置きもなくそう訊かれ、言い悩む。

「ここ、と言いますと?」

「ここさ」

彼は肩を竦める。

こことはこのゴンドラもしくは湖のことか。

はたまたあの白いお城のことか、もっと広い意味でこの世界のことか。

あたしは周囲を見回す。そして思ったことを言った。

「美しいと思います」

創手は微かに口の端を持ち上げた。嫌な笑いではなく、本当に嬉しそうだった。

「この世界をお創りになったって伺いましたが」

「うん」

「一体、どうやって?」

簡単なことを訊くかのように質問すると、彼もあっさり答えをくれた。

「この手でさ。だから創手って呼ばれてるんだよ」

創り手、ということか。
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