ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
彼が織り上げたという、生命の息吹で溢れ返った世界に、内心で幾度も溜息を吐いた。

遠くグレンヴィルが胸に一物ありげに、こちらを窺っているのを目の当たりにすると、その感動も若干色褪せたが。

「何故、赤い色は創手様のお色なんですか？」

「赤は命の色だろう？聖なる血の色。軽率に触れるなんて、許されない」

許されるというのは一体誰に？　という疑問が喉元まで急浮上してきたが、それを飲み下す。あたしは赤いヤマボウシを見つめた。

「ふふ、君は別だよ」

彼は微笑んだ。

創手はあたしより少しだけ背が低い。

急に立ち止まり、彼はよくあたしの目を覗いてきた。

彼の瞳は藍色の中に緑が点在し、まるで小さな地球のようだった。人体に浮かぶ蒼い惑星。

「何、考えてるの？」

それは度々訊かれた。そんな時の創手の目は、大人の色をしている。

「いいえ、別に」と口ではそう応えながら、言い表せない涼気を催していた。

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