ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
創手の面構えもまた、人形みたいだった。

こんな不穏な空気では答えを提示出来ない。

両手を握り締め、あたしはただ立っていた。創手が大きな溜息を吐いたので、どきっとする。

「どいつもこいつも、皆、勝手だ」

途切れ途切れに創手が語る。

「勝手にここにやって来て、その癖に、ここにはいたくないと言う」

強制的に連れてこられた立場のあたしは、直答を避け、ただただ俯いていた。

創手が悲しげに目を落とす。

「仕方ないね」

その台詞に、しかしほっとは出来なかった。

創手の目が、百歳も年上のように見えたからだ。

「こっちにおいで」と手招きされる。

絶対に行きたくないのにも関わらず、強力な呪文に掛かったように、あたしはつらつらと引き寄せられていった。
< 114 / 168 >

この作品をシェア

pagetop