ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
「これ、動くんだ」
創手はヒメの腰に付いていた、小さなぜんまいを巻く。
手を離すとヒメが台座ごと回り始めた。
同時に、ヒメの微笑を形作った桜貝の唇から歌声が聴こえた。それは人工的な音色ではなく、肉声だった。ヒメの清らかな声で、人形は唄い出した。
「ラララ……」とラ行で音階を紡ぎだしている。
耐え切れずに、ぎゅっと目を閉じ、両手で耳に蓋をした。
「可哀想だよね」
憐憫のこもった創手の声は、手で覆ったあたしの耳にも届いた。
「どうして、こんな残酷な、 ヒメが何を……」
「知り合い? ああ、君らは群れる習性があるから」
細顎に手を当て、創手は芝居じみた仕草でそうかそうかと頷いている。
その姿に身の毛がよだった。
「彼女はね、僕に逆らった。それもすごく強く反抗し
た。僕がどんなに彼女に優しくしてあげたか分かる?だ
のに彼女は僕を拒絶した。そればかりか他の仲間と一緒になって僕を陥れようとしていたな。だから全部を奪ってやった。でも埋めるには惜しいでしょ? 彼女は美しい。眺めるぶんにはうってつけ。こうして眺めて思い出すんだよ。彼女の最期の悲鳴を、血の赤さを」
創手はヒメの腰に付いていた、小さなぜんまいを巻く。
手を離すとヒメが台座ごと回り始めた。
同時に、ヒメの微笑を形作った桜貝の唇から歌声が聴こえた。それは人工的な音色ではなく、肉声だった。ヒメの清らかな声で、人形は唄い出した。
「ラララ……」とラ行で音階を紡ぎだしている。
耐え切れずに、ぎゅっと目を閉じ、両手で耳に蓋をした。
「可哀想だよね」
憐憫のこもった創手の声は、手で覆ったあたしの耳にも届いた。
「どうして、こんな残酷な、 ヒメが何を……」
「知り合い? ああ、君らは群れる習性があるから」
細顎に手を当て、創手は芝居じみた仕草でそうかそうかと頷いている。
その姿に身の毛がよだった。
「彼女はね、僕に逆らった。それもすごく強く反抗し
た。僕がどんなに彼女に優しくしてあげたか分かる?だ
のに彼女は僕を拒絶した。そればかりか他の仲間と一緒になって僕を陥れようとしていたな。だから全部を奪ってやった。でも埋めるには惜しいでしょ? 彼女は美しい。眺めるぶんにはうってつけ。こうして眺めて思い出すんだよ。彼女の最期の悲鳴を、血の赤さを」