ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
創手は静かに逆上した。

般若みたいな血相で、あたしを緑色の絨毯の上に押し倒す。

「取り消せ」

馬乗りになって、両手であたしの頭をがっちり挟む。

その手は彼の可憐な容貌からは思いもしない、万力みたいな人外の力を備えていた。

なるほど創手か。こんな状態で納得した。

「許してあげるから」

あたしは仰向けになり、悲憤に漲った美しい顔を見ていた。

「分からないの? 君が奴を結界から逃がしてやったのを、僕が知らないとでも思っているのか? 本当なら許されない所業なのに、僕は何の咎めもなしに慈しんでやっているんだよ? 君が特別だから、君が大切だと思ったから……」

創手の目は段々と冷却され、氷点下の域に達する。

「取り消して。ね? 僕を否定しないで」

もはや懇願に近い。というより脅迫か。

創手がこんなに必死だというのに、あたしの視線は彼の上を素通りし、天井の丸い大きな窓を見ていた気がする。

はっきりとしないのは、頭が締め付けられて、意識が飛びそうになっていたせいだ。

蚊の鳴く声で言った。

「あなたが、許せません」

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