ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
腕の間から見て、あたしは瞬きを連発する。

「よう、アシスタント。助けに参上したぜ」

白馬の王子様かと思ったその人は、サイドカーに跨ったルークだった。

アクション映画張りの登場に、喜色満面といった面持ちだ。

地を這うような轟音をマフラーから響かせ、ルークはあたしの前にバイクを横付けにした。

タイヤの摩擦熱で、絨毯に焦げ跡が三本煙を上げる。

「早く乗れ! ずらかるぞ!」

呆気に取られながら何とか頷くものの、足腰が砕けたように力が入らなかった。

ルークがあたしの襟首を掴み「どりゃあっ」と力技でサイドカーに引き摺り上げる。

「創手様!!」

奥から5、6人の兵士達とグレンヴィルが、異常を察知し、駆け付ける。

主人の部屋に大穴を空けられた惨状を目にし、グレンヴィルが憤怒で目を血走らせる。

「逃がすな! 侵入者を撃て! 撃ちまくれ!」
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