ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
あたしはお尻だけを座席に埋めた格好だったが、ルークは構わずに急発進させた。

尾を引く銃声が幾つも部屋にこだまし、銃弾が耳元すれすれを飛んでいく。

「ひいっ」とあたしはひしゃげるような声を出した。

「なるべく低くなれ!」

言われなくてもと思いつつ、座席に身を押し込める。

ルークの操縦するサイドカーは、入り口で銃を構える兵士を蹴散らし、まるでそれ自体が弾丸になったかのように滑空した。

あたしは背後に目を遣った。

グレンヴィルの後ろから、創手が凄艶に微笑んでいた。

あたしはとても正視出来ず、顔を遠ざけた。
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