ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
上空をヘリが旋回している。ローターが一つ付いた真っ赤なヘリコプターだ。

これは絶体絶命だと狼狽していると、ヘリの開け放たれたドアから、誰かが手を振っている。

目を凝らすとゴローだった。サイドカーを誘導しているのだ。

泣いている場合ではないのに、じわりと涙が湧きそうになる。

サイドカーは城の高台まで辿り着いた。

サイドカーを乗り捨て、ルークは壁に掛かった木製の梯子を示す。

「先に行け!」

言うに及ばずあたしは合意した。ルークを先に行かせたら、あたしが上る前に梯子を破壊しかねない。

腕を伸ばし、梯子にしがみ付く。

足を踏み外し、冷や汗を流しながらも、どうにか登頂に成功する。

後から到着したルークは疲労困憊なのか、熱帯のスコールのような、濃密な汗を滴らせている。
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