ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
場違いな掛け声と共に、ヘリに飛び移る。

ゴローが手を伸ばし、あたしを受け止めてくれた。

「オーケイ! 俺、ナイッスー」

ゴローが白い歯を覗かせる。

タイミングを計り、次にルークがジャンプをする。

恩人なのに、その姿にふとガマガエルを連想した。

彼は腕だけで何とかヘリにしがみ付いた。大慌てであたしとゴローは落ちそうな彼を引っ張り上げる。

ヘリの重心があっという間にぐらりと傾いた。ちなみにルークは百貫デブだ。

「今だ! ナオヤ」

ゴローが張り上げた声を合図にヘリは塔を離脱した。

あたしとルークを回収し、スーパーマンのような王子が操縦するヘリは、旋転し西に向かって空を飛翔する。

背後から赤い大きなヘリが追い掛けてきた。

しかし、機動性に勝ったこちらのヘリの方がスピードは速く、直ぐにじりっじりっと間隔が開く。

朝ぼらけの中、あたし達は行方を眩ますことに成功した。
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