ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
「朝から水浴び?」

ナオヤがあたしの濡れた髪に触ってきた。

いかん。心臓が早鐘を猛打している。あたしは怯み、瞬きを乱発する。

「その、太陽の光がないと寒くて」

「ふうん、変わってる」

特に関心を持った風でもなく、ナオヤがあたしのタオルを奪った。

「ちゃんと乾かさないと風邪引くだろ?」

彼はあたしの髪の毛の水気を拭き取り始めた。

洗った飼い犬の毛を拭いてやっている、そんな手つきだ。

髪をくしゃくしゃにされながら、あたしはその状況に面食らい、立ち去りたくても去れない心境に陥ってしまい、どうしていいか分からず、どこを見ていいのかも分からず、ときめきながらも、ただ俯いた。
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