ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
「あんたはどういう所で生まれたんだ?」

「日本という国です。東京という街の外れの方」

「ニホン、トウキョウ」

「はい」

「どんな街なんだ?」

ナオヤに焦点を合わせる。

いつも寂寥感を匂わせている氷の流し目から、微かな近しさを感じた。おお、口元のホクロが何とキュートなことか。

うかうか彼に見惚れている自分に気が付き、あたしはこの上なく不自然に目を逸らす。

「ここよりも汚い場所です。街も、人も」

自分で言いながら、よく分からなくなっていた。

最初に見たこの世界の豊かで気高い調和は、今は違うように見えるからだ。

東京もこの創手の世界も、実は決定的に違うわけではないと、それとなく勘付いていた。
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