ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
「創手様、黒谷様をお連れ致しました」

恭しくグレンヴィルが敬礼する。

「ああ、ご苦労。いいよ、もう下がって」

抑揚のない声で創手はグレンヴィルを労う。

「……君も、ディラン」

ディランがあたしを横目で探りつつ、むくれたように頭を振る。

「ですが、創手様、」

「下がって」

絶対的な主人の命に、ディランは不承不承と後に下がる。

去り際、彼はあたしを不満げに一瞥して行った。

木の下には二人だけが取り残された。
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