ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
じりじりと後退しながらも、目だけは土塊に釘付けになる。
土を振るい落とし、塊が本体を曝し始める。
それはまるで人間みたいな形状をしていた。
両手、両足、頭部もある。変な出っ張りの部分は背中に接合したままだ。
頭部らしき部位が、後ろに仰け反った。
その戦慄を覚える生命体は、のろのろとした動きで反った頭を正しい位置に戻す。
頭部に二つの穴がぽっかりと空いた。
それは金色の光を宿した穴だった。
穴ではない。それがその化け物の眼球であることは一目瞭然だった。
琥珀のように微かな赤みを含んだ金色の虹彩、その真ん中に黒い瞳孔らしきものまである。
その目は左右を舐めるように眺め、次に真っ直ぐあたしを捉えた。
咽頭の奥で出口を求め、渦巻いていた悲鳴があたしの口から飛散した。
「ひいいーっ!」
あたしは足をもつれさせながら、脇目も振らずに逆走した。
ここは天国ではない。夢だ。あたしは今夢を見ているのだ。それも、悪夢を。