ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
板張りの床に三方は漆喰塗りの壁、高い位置に小さな窓が一つあった。
もう一方の壁は丸い鉄の棒が嵌った頑丈な格子になっている。
鉄格子の向こうの壁には〈この顔に見覚えがあったらすぐに連絡を!〉というポスターが貼られ、指名手配犯の顔写真がこちらを威嚇している。
白い固い長椅子に座るあたしは、牢屋にぽつねんと一人だった。
こめかみに手のひらを押し当てる。湿布で治療されてはいたが、ガーゼの下で大きなコブがその存在感をアピールしている。
夢の中なのに痛かった。何も殴らなくたってと物申したい気持ちが胸中に沈んで溜まる。
一応女の子なのに。
人の気配に顔を上げた。
格子の向こう側に帽子を被った大柄な男の人がいた。
年の頃は四十代、黒っぽいスーツの内側に銃を携帯し、胸には銀色のバッジが着いている。
「手荒な真似をして済まなかったね。まさかまともに当たるとは」
あたしの非難めいた視線に気が付いたらしい。
彼は傍にあった椅子を引き寄せ、帽子を脱ぎそこに腰掛ける。