ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
第1章
歩ける
最初に覚えたのは眩しさだった。
目に沁みるような光。あたしは眉間に皺を寄せつつ、片目を明ける。
数秒様子を見てからもう一方の瞼も引き上げる。太陽だと分かった。
あたし、今外にいる……?
やっぱりあたしは外にいた。
吸い込まれそうな水色の空には、神々しいまでの火輪が照り映え、薄綿を千切ったような雲が漂流している。風が前髪を揺らしていった。
青空を目に映したまま、状況を判断しようと努めた。
事故に遭い、最初に病院で目が覚めた時に似ている。
外に出された記憶などない。もしかしてまたもや事故に?
いやいや、まさか。病室にいたはず。病室に――。
後に見た光景が、ありありと脳裏に去来する。
吐き気がした。
自分が汚物になったみたいで、あたしは咽ぶ
締まりのない蛇口から水がたらたらと滴下するように、両方の目尻から止め処なく涙が零れた。
こめかみを通過した落涙が、次々に生え際に吸い込まれていった。