ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
連れて来られたのは巨大な岩がごろごろとした、世界の果てを思わせる荒野だった。
月夜に切り立った岩肌のシルエットが浮かび上がり、地平線の向こう側まで続いている。
犬の遠吠えみたいなのが耳朶に触れ、思わず慄く。
泥人間が好みそうな不吉さに満ちた土地だ。
泥人間は岩の間を縫うように進んでいた。何処もかしこも同じような景色にしか見えないのに、何を目印にしているのか。
いずれにせよ、足の裏がいい加減痛い。
「あの」
泥人間が振り向く。
「もう、ここで結構です」
面倒臭そうに彼は腰に手を当てる。
「どこに行く気だ?」
「ええと、それは……」とあたしは口ごもる。
ここがどこかも分からないので答えようもなかった。
それにもし答えられたとしても言わなかっただろう。捕まるだけだ。