ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
「ああ、信じられねえ。おい、みんな。ナオヤだ! ナオヤが帰ってきたぜ!」
メタボロン毛の大声を聞きつけ、奥から人が三人出てきた。
どの人も泥人間ではなかった。ぜんまい付のただの人間だ。
「ナオヤ、よく無事で……。毎日お祈りしてたんやで」
緩やかに波打つ髪をアップにし、下がった眦(まなじり)の皺が親しげな中年女性が近づいてきた。
息子に会った母親みたいな笑みを浮かべている。
隣にいたのは若い女性だ。背が高く、おでこを出したポニーテールが快活な印象を与えた。
成長期に滞りなくすんなり伸びた手足と、黒目がちで少し目と目の間が離れているところが、サバンナに生息するインパラを思わせる。
「ひどい顔ねえ」と彼女は可笑しそうに笑いながらも、感涙を堪えている様子だ。
「また会えるとは正直思ってなかったけど、とにかく嬉しいよ。あの呪いをどうやって……」
三十代前半くらいの肌の浅黒い男性が、泥人間の肩に親しげに手を置く。
南国出身のような、彫りの深い顔立ちで、昔サーフィンをやっていました、という雰囲気をそこはかとなく醸し出していた。
「その、彼女のことは、本当に、何て言っていいのか……」
「いや」と泥人間。