ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
久々の感激の再会を果たしているといった光景だった。
あたしはこれ幸いとばかりに自分の存在感を消していた。
ナオヤと呼ばれた泥人間は、多少和らいだ口調で説明し出す。
「あの子が助けてくれた」
彼らが一斉にこちらを見た。
あたしは目を合わせないように、もじもじと膝を摺り寄せる。
「まさか」とメタボロン毛が首を振っている。
「誰もあそこには近寄れなかったのに?」
元サーファーが近寄ってくる。及び腰になり、あたしは両手にグーを形作り身構えた。
「君、どうやって?」
「彼女は黒谷、」
ナオヤが親指で指したまま、助け船を請うような目付きでこちらを見る。
「……麻奈」と教えてあげる。冷たい口調になってしまったことに関しては申し開きしない。
「黒谷麻奈」とナオヤは言い直す。
ナオヤはあたしの両肩に手を添えると、あたかも物を扱うみたいに体の向きをひょいと転回する。
皆があたしの背中を見て、同時に息を飲むのが分かった。
あたしは逆に溜息を吐く。
ぜんまいがないのがそんなにすごいのか。
あたしから言わせれば、付いている方がどちらかと言えば奇異だ。