ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
ウェービーヘアのおばさんが心配そうに話し掛けてきた。
「黒谷さん、ゆうたね? 大丈夫? 血が付いているみたいやけど。それに、傷だらけやし」
額の湿布を思い出した。さっきからヒリヒリする気はしていたが、膝にはガラスで切ったような細い傷もある。
しかし彼女が訊かんとしているのはイチゴの汁のことのようだ。彼女の指先から出ている矢印は寝巻きを示している。
「あ、これはイチゴの……」
おばさんはいきなりあたしの胸元の匂いを嗅いだ。
思わず身じろぎする。
「ほんまや。イチゴの匂いする。あんたまさか、食べたん? イチゴ」
あたしは控え目に頷く。おばさんが目を丸くしている。
メタボロン毛がいたく感心したように腕を組む。
「……最高」
全然褒められた気分はしなかった。