ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し

「何も知らんのやね? あんた。赤い色は創手の色。せやから赤い物を使えるのは創手だけ。イチゴを食べることが出来るのも創手だけやし、赤い服を着られるのも創手、もしくはその周辺の人間だけ。もし食べたんがばれたりしたら、あんた、天罰ゆうて死刑になるで?」

「ああ、死刑……」

死刑から逃げてきたとは言えなかったが、荒唐無稽な話に聞こえた。

「何だか、無茶苦茶ですね」

「あんた、ほんまにそう思う?」

「ええ」と肯定する。

ふうん、と言ったきりおばさんは沈思する。

「もう一つ、訊いてもいいですか?」

「何?」

「ソウシュって何ですか?」

少しだけ彼女は神妙な面持ちになる。

「創手ゆうのは、創造の創に、手足の手、って書くんやけど、まあ神様みたいなもんかなあ。この世界を創ったお人なんて言われてん。聖都城に住んでるゆう話やね」

「ここには神様が住んでいるんですか?」

「いわゆる神様とは違うとあたしらは思うてる。まあ、一番偉い人って意味で神様だってゆうてるだけやない?」

やたら冷めた口ぶりのおばさんだった。何だかあたしの夢の割には、世界観が壮大過ぎる気がした。

「あんた寒いんと違う? そんな薄っぺらな布切れ一枚で」

 首振り人形のようにカクカクと頷いて見せた。

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