ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
おばさんはランプを手に他の部屋に案内してくれた。
階段を昇った先の、角にある部屋だ。
木のドアを開けると、木製の二段ベッドが目に入る。机が一つに椅子が一脚。部屋の隅には、海賊の宝箱に似た重そうな木の箱があった。
それしかない。
味気ない、という味のある部屋ではある。
おばさんが木の箱を物色する。
中には淡い色調の服がきちんと畳まれてあるが、言われてみれば確かに赤い服は一着もないようだ。
「たぶん、サイズもちょうどいいくらいやないかな」
おばさんはオフホワイトのガーリーなワンピースを取り出した。赤毛のアンみたいな服だ。
ある疑問が浮上し、あたしは着るのを躊躇した。
「これ、誰の服ですか?」
「これ? ヒメ」
「ヒメ?」
おばさんは木箱の蓋を閉める。
「その人は今どこに?」
「ここにはおらん」