ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
事故後のあたしは無気力と死に憑かれていた。
目覚めればどうやったら死ねるかについて、茫漠と考えを巡らせる。
人工呼吸器様のお陰で自分で呼吸を止めることすら不可能で、ボードで〈殺して〉と頼んでも、誰もそんな依頼には応じてくれなかった。
何のために生きているのかなんて、そんなことを考えるのはとうに止めていた。
ドアをノックして、ママが「うふふ」と顔を差し込んだ。
ママはパートの合間を縫って、必ず様子を見に来てくれる。往復三時間半の道のりを、雨の日も風の日も、毎日欠かさずに。
「あら、川島さん。いつもお世話になります」
川島の在室に気が付いたママが会釈する。
地元スーパーの店名が刺繍された、ストライプのシャツを着ていた。ママはレジの仕事をしている。
「いえ、こちらこそ。いつも麻奈さんとは楽しくお話させてもらっています。ね?」
川島が笑顔を寄越した。
あたしは一度瞬きをして見せた。
ママが嬉しそうに微笑んでいた。