ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
夢世界に於ける芸能界の知識がゼロのあたしは「ふうん」くらいにしか感銘が得られず、ただ遠くから無関心なりに眺めていた。
こっちの世界にもビジュアル系がいるんだとか思いながら。
エントランスの手前で、もう一度ファンにピースサインをサービスし、歓呼の声を堪能するディラン。
彼の視線が道路の反対側で待機していたあたしの上で止まる。
彼がサングラスを外すと、それだけで狂信的なファンの子が喚声を上げ、過呼吸気味になっている。
サングラスの奥は意外と印象の薄い、細目の一重瞼だった。
正直、微妙だった。
その微妙さゆえ、逆に印象的とも言えるが。
ディランが何故か怪訝そうな顔付きになる。
過去に一度だけ会った人の名前を呼び起こそうとしている。そんな表情だった。
あたしは当惑する。
「悪い。お待たせ」
ルークが息を切らせ戻って来た。彼は恒常的に息遣いが荒いので、急いで来てくれたのか、それとも単なるの鼻息かは釈然としなかった。
「いいえ」
「なんか買ってくか? せっかく町に来たから土産にさ。あっちになかなか旨いチョコレートの専門店があるぜ。行ってみる?」
「へえ、是非」
キーを回し、エンジンを噴かす。
芸能人のことはもう忘れていた。
こっちの世界にもビジュアル系がいるんだとか思いながら。
エントランスの手前で、もう一度ファンにピースサインをサービスし、歓呼の声を堪能するディラン。
彼の視線が道路の反対側で待機していたあたしの上で止まる。
彼がサングラスを外すと、それだけで狂信的なファンの子が喚声を上げ、過呼吸気味になっている。
サングラスの奥は意外と印象の薄い、細目の一重瞼だった。
正直、微妙だった。
その微妙さゆえ、逆に印象的とも言えるが。
ディランが何故か怪訝そうな顔付きになる。
過去に一度だけ会った人の名前を呼び起こそうとしている。そんな表情だった。
あたしは当惑する。
「悪い。お待たせ」
ルークが息を切らせ戻って来た。彼は恒常的に息遣いが荒いので、急いで来てくれたのか、それとも単なるの鼻息かは釈然としなかった。
「いいえ」
「なんか買ってくか? せっかく町に来たから土産にさ。あっちになかなか旨いチョコレートの専門店があるぜ。行ってみる?」
「へえ、是非」
キーを回し、エンジンを噴かす。
芸能人のことはもう忘れていた。