ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
「そ、創手……様に?」立場的に、一応敬称を付け足す。

「左様で」と彼は首肯する。

「死刑ではなく?」

「誰がそのような?」

彼の鋭い視線に気後れし、あたしは沈黙を選ぶ。

「さ、お早く」

「え? あっ」

背中を押され、あたしは小部屋に足を踏み入れた。たちまち背後でドアが閉じられる。

問い質す間も与えられず、あたしは衣装替えを余儀なくされた。

どうやら死刑は免れたらしいが、今度は創手に接見せねばならない。それはそれで――。

あたしは空恐ろしくなる。

あたしは一体何年の土攻めに遭うのだろうか。

ああ、自分の夢の展開がちっとも読めないではないか。

この期に及んであたしはまだ夢だと決め付けていた。

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