ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
侍女の案内に付き従い、宰相とやらの待つ控えの間に向かう。

入ってきたあたしを見るなり、グレンヴィルは相好を崩す。

「ほお、よくお似合いで。見違えましたぞ」

あたしの笑みは、たぶん頬の痙攣にしか見えなかっただろう。

その水色のドレスは袖が丸く膨らみ、腰の後ろに大きなリボンが付いていた。ふわりと裾が後ろに広がり、頭には小さなティアラまで載せられた。

まるでシンデレラのよう。でもあたしが着るとまるでコスプレだった。

「創手様がお待ちでいらっしゃいます」

グレンヴィルが扉の前で手ぐすね引いている。

緊張のあまり手のひらの発汗が促進した。

眉を寄せ、瞬きしていると扉が両側に大きく分かれた。

中から光が溢れ出し、眩しさにあたしは顔を顰める。

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