ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
まごまごと目線を上げると、創手その人が玉座の肘掛に頬杖を突きながら、あたしをじっと眺めている。

あたしの両目は磁石の異極に吸い寄せられるように、彼の上で固着した。

創手は少年の名残を強く留めた、瑞々しい真珠のような頬をしていた。

13か14歳くらい、まだ中性的な繭で包まれている年頃だ。耳朶の長さで切り揃えた淡い金色の髪に、艶めく藍青色の瞳を有していた。

壁に描かれた天使をそのまま成長させたような、普遍的な美を形容している少年だった。

そんな世俗離れした美貌ぶりに、彼がナオヤに呪いを掛けた張本人であることを失念しそうになる。

「君が黒谷麻奈?」

変声期を出たばかりのような危うい、あどけなさを留めた声だった。

訳もなくすっと寒くなる。

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