ぜ、ん、ま、い、と、あ、た、し
ぽかんとしながらベッドに腰を下ろす。
侍女の子がこちらを見ていた。「お湯を用意致しましょうか?」とにこやかに訊かれる。
「あ、はい。じゃあ、お願いします」
侍女はかしこまりましたとお辞儀をし、奥の浴室でお風呂の準備を始める。タオルを用意している彼女のぜんまいに、いや、背中に尋ねる。
「あの、お訊きしたいのですが」
「はい、何でございましょう」
「このお城は一体何なのでしょう?」
侍女はアルカイックな笑みを湛えたまま、唇を固く引き結んだ。
その手の質問には答えてもらえないようだとあたしは会得する。
雲の上の気分とはこのことか、と思えるような肌触りの羽毛布団に包れて、極上の寝台に横たわる。
天蓋の裏側にもやはり天使が描かれていた。
あたしは言い知れぬ巨大な腕に絡め獲られていくような、胸苦しさを覚えていた。
創手とは何者なのか。一番偉い人だと聞かされていたからてっきりお爺さんだと思っていた。
純白の衣装に真紅のマントをなびかせた姿は、絵本から抜け出た王子様そのものだ。
おお、甚だ得体が知れない。