その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
当たり前だけど、私がきちんと話せば、企画部長も欠勤の許可をくれるのだ。
休めることに少しほっとして息を吐く。
企画部長に私が休むことで必要になる仕事を口頭で軽く引き継いで電話を切ると、広沢くんがなぜかさっきまでよりも怖い顔で睨んでいた。
「何?ちゃんと欠勤の連絡はしたでしょ」
尚も睨まれる理由がわからない。
「そうですね。体調不良で休むんですから、仕事のことは考えずに今日はゆっくり休んでください」
不服な表情の私に、広沢くんが不機嫌そうな声で返してくる。
「もちろん、ちゃんと休むわよ」
「そうしてください。もしちゃんと休んでなかったら、今日の夜も押しかけますから」
その言葉に思わず嫌そうに眉を寄せると、広沢くんが意地悪く口端を歪めた。
嫌がらせなのかおせっかいなのかわからないけれど、嫌な部下だ。
「じゃぁ、俺もそろそろ行くんでちゃんと休んでくださいね。あ、俺が出たら戸締りしといてください」
戸締り、ね。
今しておかないと忘れそう。
そう思ったから、広沢くんが寝室を出て行くのに合わせて私も立ち上がった。