その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―


自炊をメインに生活している私には、広沢くんの買ってきたものたちが冷蔵庫に占める割合が多すぎる気がする。

でも、せっかくの彼の厚意なのだから、少しずつ消費していくしかない。


今日は何にしようか。

いくつか手にとって考えていると、突然インターホンが鳴った。


19時過ぎにそれが鳴るのは珍しい。

時間指定で荷物を頼んだときや、不在時に届いた荷物の再配達を頼んだときに、たまーに鳴るくらいだ。

最近ネットで購入したものはなかったはず。


リビングのドアの脇にあるディスプレイ付きのインターホンの前に立って、あら?と思う。

マンションの外側のオートロック式のドアの方と繋がっているはずのインターホンのディスプレイには誰も映っていなかった。

誰かが他のうちも間違えたのかもしれない。

首を傾げながらキッチンのほうに戻ろうとしたら、またインターホンが鳴る。




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